第2回 河合準雄氏Interview

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第2回 河合準雄氏 × 泉美智子

文化庁長官。日本におけるユング派心理療法家、 臨床心理学者として有名でもある。95年に紫綬褒章を受勲。

「文化で日本を元気に」

先生は文化庁長官として、「経済力と文化力」の重要性を提唱されていますが。

日本は今、不況とかなんとか言ったって世界と比べればすごく金持ちですしね。 すごい豊かなくせに心はすごい豊かではない生活をしている。どちらも大事、両輪ですよ。 みんなあまりにも経済力のほうに頑張り過ぎて、日本は変になったのではないでしょうか。 簡単に言うと、みんなが文化的な楽しみを味わうようになれば、 消費意欲も出てきます。例えば、音楽会に行った後に、家族で美味しい物を食べるということだけでも、 経済的な効果は相当大きいはずです。

「文化で日本を元気に」をキャッチフレーズにしようではありませんか。

「金銭教育」という言葉が、昨今、かなり普及してきましたが、先生のお考えは教育にも反映できそうですね。

やっぱりお金は大切ですが、一番大事でないってことを強調したいですね。 まず、お金以外の楽しいことを経験して、もっと面白いことを体験しようとした時に、 お金がなかったらできないってこともあります。そしたら、「やっぱりお金が要るんじゃないか」ってことが分かる。

今までは、難しく捉えすぎてお金のことは教育には入っていなかった。子供はものすごく敏感ですから、 心広く「何でも聞いてやろう」と態度で進めればいいと思います。

「放っておかず、かまい過ぎず」

先生はどんなお子さんだったのでしょうか。

僕らの子供のころは本を読む子は悪い子でした。良い子ってのは元気に外で遊んでいる子なんですよ。 だから、隠れて読んだりしてた。でも、それも小学生まで。親の方針で、中学生になったら自主性を持たされて、 本も好きなだけ読んでよくなった。中学生ってどんなにえらいんだろうと思っていた。

小遣いはなかったけど、兄弟が多かったから面白くて、誰かの誕生日に神社に行くと、 誕生日の子が十銭で誕生日以外の子は五銭もらえる。好きな物買うんですが、四銭のキャラメルを買って一銭で チューインガムを買うとかね、キャラメルでも安いやつがあるんですよ。 小遣い帳を付けなくちゃいけなかったり、いろいろ規制があったけど、 そういう家々の憲法みたいなのを決めるのは親として当然だと思う。 制限があるからこそ楽しみが大きいということを教えなければいけない。

今の子供は夢や希望、そして生き甲斐を失っている、と大人はよくいいますよね。また、子どもとのコミュニケーションがうまくとれないで悩んでいるお父さん、お母さんが多いと聞きます。

大体、「今の子どもは」なんて偉そうに言っている大人が、 夢と希望をもっていなければ、お話にならない。「子どもと話をしなければ」ではなく、 一緒にいるだけでいいんですよ。親が子どもを引っ張り出そうとするのではなく、 トコトン一緒にいること。それが肝心なのですよ。親が焦ると、結果的に、子供にケチをつけることになる。 逆に、放っておくと子どもは見捨てられたと思い込む。私はよく言うんですが、「放っておかず、構いすぎず」と。 「言うは容易く行うは難し」で修練が必要ですが、これができたらすごいことですね。

会社の中でも人間関係に悩に、ストレスを抱えている人も多いようですが、人と人との距離感って難しいのですね。

学校に行けない、突然会社にいけなくなる・・・
そういう時はゆっくり休んだらいいんです。
何もしないんだけど、希望を失わないことが大事なんですよ。

※ このインタビュー記事は、リロクラブの情報誌「F・U・N」に連載されたものに加筆・修正したものです。